Myeloid proliferations associated with Down syndrome

[概要]

ダウン症候群関連骨髄増殖症(Myeloid proliferations associated with Down syndrome)のカテゴリーには、一過性骨髄異常増殖症(Transient abnormal myelopoiesis(TAM) associated with Down syndrome)とダウン症候群関連骨髄性白血病(Myeloid leukemia associated with Down syndrome)が含まれる。TAMはダウン症候群の新生児の約10%に発症し、急性巨核芽球性白血病の表現型を示し、ほとんどが自然軽快するという極めてユニークな臨床像をとる。ダウン症候群関連骨髄性白血病は5歳未満に発症し、多くがTAMと同様、急性巨核芽球性白血病の表現型を示すが、自然軽快はまれである。TAMの病歴がある症例もあればない症例もある。TAMもダウン症候群関連骨髄性白血病も芽球にはGATA1変異を高率に認める。

[症例]

1歳、男性。ダウン症候群、心室中隔欠損のフォローアップ中に血小板減少を認め、3ヶ月後に末梢血に芽球の出現を認めた。既往歴に心室中隔欠損。家族歴は特記すべきことなし。身体所見では、ダウン症候群様顔貌左胸骨左縁に収縮期雑音を聴取。

[末梢血検査所見]

WBC4200/μL
 Blast4%
 Seg32%
 Lympho60%
 Mono4%
RBC416万/μL
Hb12.9g/dL
Ht38.0%
MCV91.3fL
PLT3.4万/μL
Ret0.8%

[骨髄形態診断]

骨髄は低形成(パーティクルは過形成)、顆粒球系、赤芽球系は減少、巨核球系は著減している。芽球を20.4%認める。芽球は中型〜大型、細胞質は狭小、好塩基性でアズール顆粒はほとんど認められない。核網は繊細で、1つあるいは2,3個の核小体を有する。核は基本的に円形であるが、不整型のものもみられる。アウエル小体はみられない。

MPO染色、CAE染色、NSE染色は陰性である。顆粒球系の10%〜50%未満に低顆粒好中球、偽ペルゲル核異常、赤芽球系の10%〜50%未満に巨赤芽球様変化、巨核球系の10%〜50%未満に微小巨核球の異形成を認める。

以上から、MPO染色陰性の急性白血病で、ダウン症候群であることを加味すると、Acute megakaryoblastic leukemia(急性巨核芽球性白血病、FAB分類 M7)がもっとも疑われる骨髄所見である。

芽球は中型〜大型、細胞質は狭小、好塩基性でアズール顆粒はほとんど認められない。核網は繊細で、1つあるいは2、3個の核小体を有する。核は基本的に円形であるが、不整型のものもみられる。

MPO染色、NSE染色、CAE染色は陰性である。

顆粒球系に低顆粒好中球、偽ペルゲル核異常の異形成を認める。

赤芽球系に巨赤芽球様変化、巨核球系に微小巨核球の異形成を認める。

[骨髄血細胞表面マーカー]

マーカー陽性率(%)
CD1374
CD3390
CD3686
CD11788
CD417
CD42b20
CD784
CD3499
CD5678
cy-MPO6
HLA-DR23

[染色体・遺伝子検査]

[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
48,XY,+21,+8[2]
48,idem,add(21)(q22)[1]
47,XY,+21[17]

[遺伝子発現解析]
GATA1変異を認める

FLT3-ITD]
検出されず

[解説]

ダウン症候群の5歳前の小児の1%~2%にAMLが発症する。その多くは急性巨核芽球性白血病の病型をとる。血小板減少が先行し数ヶ月間の比較的緩徐な経過をとる症例が多い。ダウン症候群ではMDSとAMLの間に生物学的ならびに臨床的違いはなく、WHO分類ではこれらは一括して扱われる。

末梢血中には芽球以外にしばしば異形成のある赤芽球が出現し、また巨大血小板が見られる症例もある。

芽球形態は多彩であるが、中型でN/C比大、核網繊細の未熟型と、大型で広めの細胞質を有し核網は硬めの成熟型に大きく分けられる。細胞突起(bleb)を呈する芽球も散見される。MPO染色、NSE染色、CAE染色は陰性である。本症例のように、赤芽球系や顆粒球系に異形成を認める例や微小巨核球が見られる例がある。

細胞表面マーカーではCD117、CD13、CD33、CD7、CD4、CD36、CD41、CD61などが陽性を示す。とくに、巨核球系抗原のCD41、CD61が診断に有用であるが、本症例のようにCD41陰性の症例もある。

21 trisomyに加えて芽球にGATA1変異を認めることが特徴的であり、染色体では+8などの付加的異常もしばしば認められる。

参考文献

  • Taga T, Watanabe T, Tomizawa D,et al.Preserved High Probability of Overall Survival with Significant Reduction of Chemotherapy for Myeloid Leukemia in Down Syndrome: A Nationwide Prospective Study in Japan.Pediatr Blood Cancer. 63:248-54. 2016
  • Gamis AS, Alonzo TA, Gerbing RB,et al.Natural history of transient myeloproliferative disorder clinically diagnosed in Down syndrome neonates: a report from the Children's Oncology Group Study A2971.Blood. 118:6752-9.2011

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